今日の風、なに色? 辻井いつ子 アスコム 2004年
全盲のピアニスト、辻井伸行さんの母、いつ子さんによる子育てエッセイ。息子誕生の瞬間から、子どもの目が見えないことへの不安、子どもが持つ音楽の才能によって見えた一筋の光、良き指導者との出会いなど、当時書いていた日記の記述を基にまとめている。全盲の子どもを育てるゆえの苦労、だからこそ得られる感動や喜びについて余すことなく綴られていて、心動かされる。
いつ子さんの子育てで特筆すべき点は、あくまで子どもの個性を尊重し、伸ばすという視点に立った教育をしてきたところである。軸がそこにあるからこそ、時に視覚障害者の育児では当たり前と思われている常識にとらわれないこともある。個性を信じて伸ばすことを実践し続けてきたからこそ、天才ピアニスト、辻井伸行さんが育ったのだと納得がいく。
迷ったことや苦しいと思ったことも、当時の日記の生々しい記述からとてもよく伝わってくる。時に悩みながら子供とともに歩んできた日々の記録から学べることは多い。
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