生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門 松井孝典 文春新書 2013年
近年、地球外生命の探索が進むにつれて注目を集めるようになった学問分野であるのが、アストロバイオロジーだ。本書は、その新領域の学問を1人の学者が系統的に論じた入門書である。
まず思うのは、アストロバイオロジーという分野の扱う領域がいかに広いかという事実である。中学・高校までの理科でいう、物理・化学・生物・地学のあらゆる領域が関わり、また、これらの分野が互いにどう関連するかが見えてくる。各分野のつながりが見えてくる過程は、大きな感動を呼ぶ。
話題は多岐にわたり、古代哲学者の思想、生物の細胞に関する基礎知識、進化論、分子生物学など・・・ しかし、1人の筆者がまとめているゆえに、これらの連関がしっかりと見えてくる。さらに、ウイルスや極限環境に生息する生物など、一見地球外生命の探索と関係のないように思える研究も、本書でその裏にある意義が述べられた後は、関心が芽生えてくる。
地球外生命の探索は、なぜ我々はここにいるのか、我々は特別な存在なのかといった、人間や生命に対する根源的な問題に関わる。学問の境界を越えてその謎に迫ろうという試みには、知的好奇心が大いに刺激された。
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