23区格差 池田利道 中公新書ラクレ 2015年
様々な分野が東京、特に23区に集中し、地方の未来が憂える中、あえて東京23区内の格差に言及し、一人勝ちしたものとして今後の都市生き残り戦略を先導していくためのヒントを得ようとしたのが本書である。裕福な層が郊外に大きな家を構え、都市部には貧しい人々が集まるという傾向を持ったアメリカとは異なり、23区の山の手地域には極めて裕福な人々が暮らす。これは本書内で指摘されることであり、言われてみてふと気付いたことである。確かに、東京は他の都市とは異なった独特な進化の道を辿っているのかもしれない。本書の一貫した姿勢は、常識を覆すことである。多くの人が各区に対して持っている一般的なイメージや、誰もが注目する数字に関してどうこう言うのではなく、新たな視点を得られるようなデータに重点が置かれている。テーマは23区の格差ではあるが、ここから都市の在り方について考えをめぐらすことは十分可能だ。定住者が増えればよい街になるのか。子どもの数が増えれば少子化は解消するのか。いずれも、意外な結論が待っている。
ちなみに、「23区の通信簿」という形で、各区に関するコメントが述べられている。AランクからDランクまで格付けされていて、特に23区民は気になるところであろうが、この格付けは、ある雑誌で行った区の知名度ランキングをもとにしたものに過ぎない。必ずしも区の実力とは一致しないので安心されたい。筆者はもとは地方の創生にも関わってきた人物だけに、弱い区に甘く、強い区に厳しいという立場でコメントしていると明言している。
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