女子高生 制服路上観察 佐野勝彦 光文社新書 2017年
筆者は、学生服メーカーの研究職に就いている。学生服の世界は意外と奥が深く、学校、メーカー、生徒の3者の思惑がダイナミックに影響し合って成り立っている。学校側は生徒の着崩しを憂慮し、メーカーは1校の採用が命運を分けるというフィールドで努力し、生徒は生徒なりの思考とルールで制服を着こなす。これらがまったくうまく噛み合わないとき、3者ともに残念な結果になる。そのような最悪な事態を防ぐべく、筆者は路上で高校生の制服の着こなしを観察し、果敢にインタビューし、研究し続けてきた。その成果がまとめられたのが本書である。
教師や保護者の立場からすれば、制服の着崩しに対して嘆きたくなることもある。メーカーだって、せっかくのデザインが活かされない着方を見れば、悲しくなるであろう。しかし、その裏に隠れた生徒側の心情を丁寧に調査していくと、興味深い現象がわかってくる。例えば、なぜスカートは短い方が好まれるのか。柄はチェック柄が好まれるのか。生の声を聞き、観察を繰り返すことで、筆者はある答えにたどり着いた。
教育業界に関わる人間が読んでも面白く、高校生の服飾について関心がある人間が読んでも発見があり、若者文化について考えたい人間にも一読の価値がある。本書を読めば、普段何気なく目にしていた制服姿の高校生に対する見方が変わる。
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