考える障害者 ホーキング青山 新潮新書 2017年
2016年から、障害者差別解消法が施行され、さらにはパラリンピックへの注目度も高まり、障害者に対する社会の見方は少しずつ変化しているように思える。しかし、ずっとお笑いの世界で、何となく社会からはタブーとされているような障害者をネタにした芸に挑み続けてきた筆者からすると、障害者に対する議論は、極論や遠慮がちな物言いが多く、どこか釈然としない。そんな思いから綴られたのが本書である。
障害者に対して、どこまで社会的な資源を使うべきか。24時間テレビやバリバラは何が問題なのか。そして、障害者の存在意義についてはどう考えればよいのか。筆者は、本書の中で明確な結論にはたどり着いていないが、これらの問題について当事者の立場だからこそ語れる言葉と視点で、考えあぐねる。本書で挙げられたテーマのどれもが、社会において深く議論することが避けられてきたものである。その分野に、筆者は果敢に挑んでいく。
さすがの言葉の名手とあって、筆者の語りは滑らかで、読み手はどんどん読んでいける。しかし、そのスピード感とは裏腹に、それぞれの問題は、議論すればそのための時間がいくらでも必要となるであろう。私自身、答えの見つからない問題を前にして、茫然たる思いにもなった。でも、これだけは言える。読後は筆者の語りが私の頭の中を巡り、どこか今までとは違う発想や思考で満たされ、障害者について考えるための1つの道筋を得た。
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