やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑧ 渡航 小学館 ガガガ文庫 2013年
季節は秋から冬に移ろうという時期、総武高校は生徒会選挙を迎えようとしていた。生徒会長の立候補者、一色いろはは、実はクラスメイトの勝手な行動で立候補させられただけで、何とか会長にならずにすむ方法を探しに、奉仕部を訪れる。この依頼に対して、奉仕部の3人は、それぞれ別の案を提示し、対立してしまう。
宝島社刊、「このライトノベルがすごい!2014」で見事総合1位に輝いた本作。勢いづいていたところにアニメ化も重なり、今年は大フィーバーとなった。ブログ管理人のように、アニメから原作を知った人も一定数はいたはずだ。
そして、8巻はまたもや大きな転換点となる巻であった。文化祭、修学旅行と大きな行事のたびに舞い降りてくる奉仕部への依頼。その中で主人公、八幡の働きはあまりに大きかったが、それは同時に自らの犠牲を伴うものであった。本人は、孤高を貫いてきたゆえ、それを犠牲とも思っていないのだが、彼のことを心配する人間ほど、彼の自己犠牲精神に疑念の念を抱いていた。そして迎えた生徒会選挙では、またもや八幡の犠牲を伴う作戦が提案されるが、雪ノ下、由比ヶ浜はそれを許さなかった。2人が出した解答は、自ら生徒会会長に立候補するという結論だった。会長の激務と部活の両立は困難を極めるゆえ、奉仕部は解体の危機に晒される。そんな中、八幡が作戦を変更する。今までの1人で悩み、1人で解決する方法から、知り合いに相談し、一緒に解決策を探り、誰も傷つかない作戦を実行しようとするのだった。
6巻、7巻に続いて長編となった8巻だったが、これまでと変わらず、読み出すと止まらない展開であった。奉仕部解体の危機の中で、八幡が奉仕部の日常を守り抜くために奔走する姿は感動的ですらある。まさかのどんでん返しで、一命を取り留めた奉仕部の日常だったが、八幡は自分の選択肢が間違っていなかったか最後まで思い悩む。明らかに違う八幡になった瞬間であろう。
相変わらず、多感な高校時代の心情の機微を表現するのが巧い。一挙手一投足に気を使い、人間関係に翻弄されながら生きる彼らの一生懸命さに心動かされる。また、本シリーズの中で一貫して繰り返される、このような日常にも終わりが来るだろうという記述に、確実に時間は過ぎ去っていく厳しい現実を感じ取っている彼らのしたたかさも感じられる。
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