回避性愛着障害 岡田尊司 光文社新書 2013年
他者との親密な関係を避けたり、責任が重い仕事を苦手とする人々が増えているという。筆者はその原因を回避性愛着にあるとし、その問題点について考察していく。
人間が他者との関係を築くうえで重要な役割を担う愛着は、ボウルビィの研究などから、いくつかのタイプに分類されている。その中で、養育者との関係がよそよそしい関係になっている場合を回避型と呼んでいる。現在、その回避型は増加傾向にあり、人間関係の問題に留まらず、少子化などの社会問題の根幹になっていると、筆者は分析する。
本書の中で触れられる具体的な記述を見て、身近にいる回避型の人を想像した読者も多いのではないかと思う。確かに、回避型の人々が増えることは、社会問題と言えそうだ。しかし、愛着の問題で難しいのは、愛着の問題は、母親の養育に関する問題と切っても切れないつながりがある点だ。筆者は、愛着の問題は幼少時における母親との関係が重要であると述べていくわけだが、特に経済状況がよくなければ、母親が働きに出なければならない場面は多い。子育てに不得手な母親だっているはずだ。それでも、母親の働きかけが重要であると言い過ぎてしまうと、今度は母親の精神的負担があまりにも大きくなるのではないだろうか。根底にある状況を考慮せずに愛着の問題を語ると、また別の問題が出てきてしまう。愛着の問題とどう向き合うのか。これは、生半可な問題ではない。
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