エヴァンゲリオン化する社会 常見陽平 日経プレミアシリーズ 2015年

エヴァンゲリオンの放送開始20周年、そして作品が舞台となる年である2015年に発売された本書は、エヴァンゲリオンを通して現代社会の労働について語ろうという意欲作である。いわゆる「セカイ系」に分類される作品と労働という、いかにも無関係そうなテーマだが、この視点はなかなかに興味深い。
決して報われることのない労働に対して、自分なりの価値を見出して逃げずに必死に戦い続ける14歳の少年少女、最も出世したと思われるキャリアウーマンの宿命を体現しているかのようなアラサー女性などは、現代の社会が生み出した過酷な労働条件のもと生きる人々を描いているようだと筆者は語る。なるほど、他より優れた特別な力を持った人間であることを期待され、それでいて自分の代わりはいくらでもいると言われ、日々プレッシャーに怯える人々、明らかにブラックな労働環境でもそこに意義を見つけて逃げ出さずに働くことを求められる人々、女性の社会進出が推進される社会でバリバリ働く女性など、作品の登場人物達とシンクロするような環境で働く人々は少なからずいるように思える。
おそらく、当時の制作者達にそのような意図があったとは思えないが、エヴァンゲリオンにこんな読み方もあったのかと思わせてくれた。
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