ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?―キャリア思考と自己責任の罠 福島 創太 ちくま新書 2017年
「ゆとり世代」というくくりが登場してからそれなりの時が経過し、その年代の先頭は30代へと突入しつつある。何かとこれまでの人間とは異なる人々という印象を持たれ、「ゆとり」というレッテルを貼られてきた彼らは、就職・転職という人生の一大選択においても、明らかにそれまでの世代とは異なった思考や行動を示しているようだ。本書は、これまでの日本型雇用慣行に従わず、転職を繰り返していく「ゆとり世代」の若者のインタビューからその思考に迫り、その背景にある社会の仕組みに対する批判的な考察を行い、更には現状を打破するための案を提示する。
筆者が最も危惧しているのが、現代の日本社会の様々な側面に見られる分断である。世代間の分断、富裕層と貧困層の分断など、「あの人たちは自分とは違う」という感情に結び付きやすい状況のことである。本書に登場しインタビューを受ける「ゆとり世代」の転職者の語りも同様である。とても共感できるという見方から、けしからんという見方までがあろう。それでも、「やりたいこと」を求めたり、「ここではないどこか」を見つけたかったりして転職を繰り返す若者の行動に社会が影響しているという側面を無視した過大な自己責任論を展開しているだけでは、今後の日本に未来はないのではないかと筆者は警鐘を鳴らす。
本書を読んでいくと、若者の転職問題は根の深い問題であり、すぐには解決できないほどに大きな問題ではあるが、とにかく考えること、気付くことが重要なのではないかと思うようになる。
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