高大接続改革――変わる入試と教育システム 山内太地・本間正人 ちくま新書 2016年
2020年度から大学入試が大きく変わることを受け、「アクティブラーニング」という言葉が様々な場で使われるようになった。本書は、保護者、教師などが教育改革の動向を理解し、その中でどのような教育を行っていけば良いのかというヒントを与えてくれるものである。
まさに大転換を迎える2020年教育改革だが、現実には現中3生からその影響を色濃く反映した学校教育を受けていくことになる。そして、現小5生からは完全に改革された中等教育を受け、本人が望めば大学へと進学する。その年代の子どもと多少たりとも関わりのある人にとっては、気が気でないかもしれない。本書は、言葉だけが独り歩きしている感のある「アクティブラーニング」について、それが必要になっている背景、家庭でできること、アクティブラーニングの思想を取り入れている学校の事例などを紹介し、心の準備ができるようにしてくれる。
実のところ、アクティブラーニングを基本とする教育は、文化資本や金銭に恵まれた家庭の子どもと、そうでない子どもの格差を助長しかねない可能性を秘めた怖さを持っているそうだ。それでも、子育てをしている家庭にとっては、来るべき時代に対して可能な限りの準備をしておきたいというのが本音であろう。本書を読むと、決して身構え過ぎず、人間本来の学びたいという気持ちを尊重し、自分たちだからこそできることを、という視点を忘れずに果敢に立ち向かう姿勢こそが大切だと思えてくる。
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