教育委員会―何が問題か 新藤宗幸 岩波新書 2013年
誰もが教育委員会という組織の名前は知っていても、それがどのような組織で、日本の教育にどのような影響を及ぼしているのかは、案外知られていない。本書は、教育委員会に関わる問題点を指摘し、さらにはそこから見えてくる日本の教育に根付いた問題であるタテの行政系列についても取り上げ、日本の教育問題の改革に向けての提言も行うものである。
地方教育委員会の背後にある都道府県教育委員会の影響力、さらにはその上の文部科学省の影響力を知らずに教育委員会について語ることはできないというのが、本書を読むと痛切にわかる。「教育を市民の手に委ねるために教育委員会を廃止せよ」、あるいは「教育委員会は行政との独立性を維持するために存続すべき」といった両極端な意見も、筆者の指摘する、日本社会に蔓延るタテの行政系列を考慮しないことには、いずれも考慮するに値しない。教育委員会の問題は、日本の教育をどうしていくかという問題とは切っても切れないのだ。
教育委員会に関する考察から見えてくるのは、日本の教育が抱える制度的な問題なのである。
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