忍者ブログ
# [PR]
2025/02/02 12:36
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


CATEGORY [ ]
pagetop
# 『学級崩壊立て直し請負人 菊池省三、最後の教室』
2016/07/03 18:58
学級崩壊立て直し請負人 菊池省三、最後の教室 吉崎エイジーニョ 新潮社 2015年



北九州市は、その土地が持つ歴史的背景ゆえに、他の地域とは比べものにならないほど、教育に困難が伴う。そんな地域で30年にもわたり小学校教員を務め、しかも荒れたクラスを立て直すスペシャリストとして奮闘してきた人物が、菊池省三だ。本書は、彼の教師生活最後の2年間の実践の記録である。

教員人生の後半は、6年生専門教員かというくらいに、6年生ばかりを担任してきた菊池先生だった。しかし、最後の2年間は違った。3月に6年生の卒業式を終えて、再び新6年生の担任になるのだろうと思っていた菊池先生に告げられたのは、新5年生の担任だった。かねてから「あの学年は菊池先生でなければ無理」と言われ続けてきた学年の問題児を選抜したクラス、菊池先生が言うところの「ヤンキース」を受け持つことになったのだ。これまでの4年間で担任教師たちが手を焼いてきた生徒たちに、菊池先生が立ち向かっていく。

本書は、本人によるものではなく、元教え子の吉崎エイジーニョ氏が取材してまとめたものである。そのため、教師側の判断、葛藤もさることながら、生徒側がどう思っていたのかについても書かれていて、実践の様子が様々な面から見られる。菊池先生が年度当初に考えていた作戦、初対面の時の生徒が持った印象、クラス内で起こった事件と、それに対する教員側、生徒側の意見など、学級の動きがとてもよくわかるのだ。また、菊池先生の教育を単に褒めたたえるのではなく、彼のちょっと強引さがある点、算数の授業は案外流すことも多かったという点を指摘するのなど、1人の教師という存在を描き出しているところも非常に興味深い。

本書で特に取り上げられたのが、トップレベルの問題児、堀之内君である。本書は、菊池先生の「集団の中で個を育てる」という教育哲学をいかに堀之内君に対して実践していったかの記録ともいえるくらいである。教師が一対一で指導に当たることもあるが、本書の中で目を引くのは、堀之内君が、クラスメイトによって褒められ、悪い点を指摘され、変化していきたいと思い、成長を見せていく記述である。これだけ情報技術が発達した今、学校教育の存在意義として考えられる最後の砦が、菊池先生の言う、「集団の中で個を育てる」という哲学に基づいた「公の場で通用する人間を育てる」という側面なのではないかと思う。
PR

CATEGORY [ 教育 ] COMMENT [ 0 ]
pagetop
<<『アニメやマンガが地方を救う!! ~「聖地巡礼」の経済効果を考える~』 | HOME | 『オタク女子研究 腐女子思想大系』>>
コメント
コメント投稿














pagetop
FRONT| HOME |NEXT

忍者ブログ [PR]