病む女はなぜ村上春樹を読むか 小谷野敦 ベスト新書 2014年
村上春樹をめぐっては、狂信的なファンがいる一方、到底受け入れられないという人もいて、両者の間に深い溝があるように思う。本書は、ファンにとっては嫌な、アンチにとっては軽快な村上春樹論である。
実際のところタイトルの答えとなるような話はあまりないような気がする。主に展開されるのは純文学と通俗小説の違いについての論考である。その他、精神を病むということのファッション化、村上春樹作品の俗物性などのテーマが語られる。それでも、村上春樹作品に対して何らかの違和感を覚える人にとっては、その違和感の正体を知る手がかりは得られるのではないだろうか。特に、村上春樹を特別視するような見方をことごとく打ち砕いていく展開は面白い。
主人公の男達は女性にもて、女性は都合よく主人公と寝るといったことは、フェミニズムの視点からよく語られる批判である。本書はさらに一歩踏み込み、村上春樹をこよなく愛する女性の精神性について語ったのが興味深いところ。
PR