ストーリーメーカー 創作のための物語論 大塚英志 星海社新書 2013年
物語が物語たり得るには、物語としてのパターンを備えている必要がある。それがなければ、物語は破綻しているように見られてしまう。では、そのパターンと呼ばれるものは、作家の専売特許かと言うと、そうではないとするのが本書の立場である。物語には一定のパターンがあり、それは誰でも習得可能なものであると筆者は言う。物語のパターン、すなわち物語文法を使って、実際に物語を制作してみようというのが本書である。
帯には「読むな、使え。」の文章があり、これはあくまでも何かしらの作品を書きたいと願う人間を読者として想定し、また、そのような人間に実践しながら利用してほしいという意図のもとに書かれたものである。だから、そうでない人間が読むだけで終わらせてしまうのは、筆者の願いとはかけ離れた利用法で恐縮なのだが、本書は物語論入門書として非常に興味深く読めるものなのだ。構造主義的な思想から生まれてきた物語形態学や、精神分析の分野から出てきた神話の分析など、思想の背景や形は違えど、これらの物語論は、大きな枠組みにおいては一致している。そして、このような物語の類型法を知っていると、文学作品から宮崎アニメ、ハリウッドに至るまで、多くのエンターテインメント作品が物語文法に忠実に従っていることがわかる。後半の実践編では、実際に物語文法を使って物語を書いてみようと試みた学生の物語創作の過程もわかって興味深い。
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