女子学生はなぜ就活で騙されるのか 志望企業全滅まっしぐらの罠 石渡嶺司 朝日新書 2015年
「女性総合職は実質まだ10年」―これが、本書の序盤で指摘されている点である。まだまだ日本社会に定着したとは言いづらいのが女性総合職であり、それゆえに女性の就職活動においては総合職をめぐる誤解や悩みが多く存在するようだ。キャリアを考えるうえで選択肢が多くなったように思えても、実は企業が期待する人物像とは程遠い人間になっていたり、結婚や子育てとの両立で悩んだりと、現状は依然として厳しい。
本書では、実際のところ男性であっても当てはまるような就職活動の成功体験や失敗談を扱っている。それを通して、就職活動の実態や大学生の多くが持つ勘違いについて、企業や大学への取材に裏打ちされた分析を試みている。最終章の内容は女性ならではの就職活動、その後のキャリアの難しさについて扱っているが、全体的には就職活動を控えている人なら読んで損のない内容である。
読んでいて思ったのが、日本企業の伝統である総合職採用という方式が、今後どこまで生き残るのかということだ。「何でもやります。どこへでも行きます」の精神を基本とした採用方式は、企業が社員のキャリア決定に大きく関わるものである。専門を活かして自らキャリアを形成することを基本とする欧米の視点からするとあり得ないとよく言われる。女性の活用を大々的に掲げるのであれば、総合職の概念自体見直しが必要なのかもしれない。
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