いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識 荻上チキ PHP新書 2018年
「ストップいじめ!ナビ」の代表理事である筆者が、いじめ問題について、これまで蓄積されてきた知見をデータに基づいて示し、いじめ防止において何が大切か述べた本。「いじめの深刻化→道徳教育の充実」という図式は正しいか、いじめが起こりやすい場所はどこか、いかなる対策が有効かなど、単なる感情論に終始するのではなく、データから言えることを考えていく。
特に興味深いのが、「ご機嫌な教室」という概念だ。いじめは多くの場合、児童・生徒がストレスを感じる環境下で起こるという。それならば、ストレス要因を除き、児童・生徒が心地よく過ごせる環境を整備することがいじめの抑制につながるということになるのだ。
筆者が主張している、市民社会において許されるかという視点は非常に大事である。いじめを、単なるふざけ合いやからかいと思わず、将来的にハラスメントやヘイトスピーチのような人権侵害にもつながる恐れがある問題として考えれば、これは学校教育の場に留まらない重要な問題だ。
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