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# 『日本人はなぜシュートを打たないのか?』
2009/10/13 13:12
日本人はなぜシュートを打たないのか? 湯浅健二 アスキー新書 2007年



なかなか刺激的なタイトルで、前から気になっていた本。
それでも、正直言って、内容は日本人の文化がどうだといったようなものである気がして、読んでいなかった。
だが、読んでみて驚き。確かに全体の根底にあるのは、日本人よリスクを冒せというメッセージである。しかし、書かれている内容自体は、サッカーがいかに有機的な個々の動きの上に成り立っているかということ、ボールのないところで動き回ることや守備に奔走することの大切さである。それが、筆者がドイツ留学し、選手として感じ取ったことや、指導者になって実感したことを中心に、初心者にもわかりやすく書かれている。読んでみると目から鱗で、サッカーの見方が変わる。

サッカーを見るとき、我々はともすると、シュートした選手や、華麗なスライディングでボールを奪った選手のみに目が行ってしまう。しかし、その裏では他の選手がシステマティックに相手を翻弄し、チャンスを創り出しているのだ。よくよく考えれば当たり前のことだ。それでも、どのような見方をすればよいのかは、私を含めて初心者にはわかりにくい。その部分が、本書では至るところで示されている。

また、本書は優れたコーチングとは、という視点でも読むことができる。本書における監督やコーチを、上司、教師、親などに置き換えれば、たちまち本書が立派な教育書へと変身する。

タイトルは、それ自体目を引くものだが、語られる内容が濃い良書である。
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# 『爆笑問題のニッポンの教養 我働く ゆえに幸あり?』
2009/10/10 17:33
爆笑問題のニッポンの教養 我働く ゆえに幸あり? 爆笑問題+本田由紀 講談社 2008年




テレビ番組で行った討論を収録したもの。
内容は、若者の貧困問題や、それに対する政府・社会の役割など。

この本で本田先生と太田さんが語る内容は、まさに現在社会についての議論の縮図であるように思う。若者の低賃金の実態、ニートの問題についての指摘があると、すかさず、そこまで問題ないだろうという論が出てくる。

ニートは本人の努力不足によるものなのだろうか。この問いに対して、本田先生は、ニートの発生はこれまでの日本社会の仕組みが成り立たなくなった時点で必然的に生じる現象であると言う。では、この責任はどこにあるのか?若者を「被害者」と言いきってしまうことに、問題はないのか。

このような問題は、非常にセンシティブである。また、日本の中で意見が大きく分断されている問題でもある。
結局、どのような環境が、社会にとって望ましいのか。社会の問題だけでなく、自分の意識をどう持つべきかについても考えさせられる1冊。

番組の放送記録もご覧ください。

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# 『国際人の英会話学習法』
2009/10/05 14:58
国際人の英会話学習法 スティーブ・ソレイシィ 角川oneテーマ21




英会話の、特にアウトプットに向けた学習法について述べた本。
本書の画期的な点は、日本人の英会話学習法について、外から眺めてみた視点が取り入れられていることである。筆者は、初めにエジソンの「達成のための三大要素」を挙げる。それはすなわち、
 1.努力
 2.継続性
 3.常識
である。筆者は、日本人は決して努力や継続性が劣っているのではなく、常識(common sense)が欠けているのだとする。では、「常識」とは何か?
筆者によると、国際的には英会話学習は圧倒的に発信重視である。しかし、日本の英会話学習は発信を前提としたものではないため、往々にして、失敗に終わっているというのだ。また、細かいことや多様な表現にこだわりすぎてしまい、がんじがらめになっている現状をも指摘する。そこで、筆者は自分の得意とするフレーズを徹底的に使えるようにし、会話の名人になることを提案する。本書の後半は、筆者お薦めの表現"May I have...?"を使いこなす練習に割かれる。

筆者の指摘は、非常に面白い着眼点から為されていて、それでいて、なるほどと納得させるものがある。いわゆる受験英語から、英会話教室の教え方まで、おかしな点に次々と切り込んでいく。
大学受験の英文は、内容が非常に難しいものも多い。それなのになぜ、いざ何か英語を口にしようとすると、簡単なことさえうまく言えないのか。それは、自分の言いたいことを伝えるための言葉が実になっていないからである。

今までの英語学習に着いて行けないと思っていた人、矛盾点を感じていた人にとっては、朗報である。しかも、これはただの励ましでも何でもない。筆者の語る論理は極めて明晰で、説得力がある。

それでも、最後に欠点を挙げるなら、1つ。本書は発信に重点を置いた本であり、リスニングの向上に必要な事項には一切触れていない。自分が話す英語は定型パターンで構わないかもしれないが、相手の話す英語は、多種多様。それを確実に聞き取ることが、応答の大前提である。
もちろんのこと、そのような欠点を補って余りある内容ではある。自らの英語観が変わる。

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# 『音楽の聴き方』
2009/10/02 15:11
音楽の聴き方 岡田暁生 中公新書 2009年


優れた芸術評論に贈られるという、第19回吉田秀和賞受賞作品です。

音楽がわかるとは、どのような状態のことを言うのか、また、どんなことに注意することで、音楽を理解できるのかについて述べようとした本。
筆者は、「音楽は語ることはできない」「音楽は国境を越える」といった言説には、極めて懐疑的である。筆者によれば、そのような言い分は、西洋近代社会において創られた幻想である。
音楽を語る言葉を知り、音楽の歴史的背景を理解することで、音楽の聴き方が変わるというのが、筆者の主張である。

しかし、タイトルから推察するに、音楽を理解するための方法論が縦横無尽に展開されるものかと思えば、そうではない。音楽を聴くにあたって、意識すべきことや、曲の背景を無視した演奏への批判は語られていても、音楽の理論面に関する説明は、驚くほど少ない。その点が、私のように音楽初心者にとっては、結局のところ音楽はよくわからないという印象を壊すまでに至らない。
詰まるところ、音楽の背景について豊富な知識を持った筆者が、現代の音楽文化を批判的に見て、「~すべき」という論を展開しているだけのように思えてしまう。

やはり芸術の理解は難しいのかという感想が、残ってしまった。

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# 『マネー・ボール』
2009/09/28 17:32
マネー・ボール マイケル・ルイス(中山宥 訳) ランダムハウス講談社文庫 2006年




大リーグのチーム、オークランド・アスレティックスは、非常に資金力に乏しい球団でありながら、常勝チームとしての地位を確立している(近年は低迷)。その秘密とは、何であろうか?それは、野球を統計的に分析し、費用対効果比を上げようとしてきたことによる。
では、実際どのようにしているのか。また、そのような方法を巡って、フロント・選手・監督・コーチのそれぞれの間には、どんな軋轢があるのか。様々なエピソードによって、チームの現実が浮き彫りにされていく。

衝撃的な本である。
安い買い物をし、高い効果を得るには、まず、選手の実力を正確に測る必要がある。それには、野球における数値のどこを評価すればよいのか。その分析が、この本の大きな幹である。本書で展開される理論は、多くの場所で大反響を得た。同時に、拒否反応も受けている。

しかし、野球理論だけでも十分驚きに値するのに、それだけで終わらないのが、この本の魅力である。
本書の根幹にあるテーマには、「経験者と未経験者」「内部と外部」の対立がある。
これこそが本書を単なる野球本の地位に留まらせず、ビジネス書とまでも言わせている理由であろう。

実は、アスレティックスの経営側は、野球未経験者で構成されている。それゆえに、時に選手や監督の中からは、フロントの方針に対して「野球をやったことがないくせに」という不満が噴出する。しかし、現実には、野球経験者だからこそ陥ってしまう落とし穴があるのも事実である。伝統的には意味があるとされている作戦や選手の評価法が、理論的には無意味だと判明してしまうことがある。その時、経験者達は、何を感じ、どう考えるのか。本書では、このような葛藤が克明に描かれている。

このような対立は、「内部と外部」という言葉に言い換えることもできよう。内部のものにとっては、譲れないもの、大切なもの、当たり前のことが、外部にとっては奇異なものに見えることが、多々ある。例えば、政治家と一般市民、公務員と民間、学校と塾など。いずれの例も、前者を内部の者とすると、その常識が外部に当たる後者にとっては信じられないことがあることを示す。

つまり、『マネー・ボール』に描かれていることは、結局のところ、現実の社会の状況を野球界という一側面によって切り取ってみた断片であるとも言える。その辺りが、本書をしてビジネス書とせんとする一角が存在する理由であろう。


本書の理論について簡単に触れてみたい場合は、マネー・ボール理論とはを訪れてみると良い。理論の大枠が、日本の野球とも絡めて詳しく解説されている。

また、本書の理論を解説した上で、やや批判的な検討も試みている記事としては、『マネー・ボール』を検証するがある。

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# 『講談 英語の歴史』
2009/09/25 15:30
講談 英語の歴史 渡部昇一 PHP新書 2001年




英語の歴史は約1500年と言われている。その中で、英語がどのように変容してきたのか、社会情勢の変化と関連付けながら述べられている。
一般に、英語史は言語自体の変化に重きを置いた視点か、言語を取り巻く環境の変化を重要視する見方か、どちらかで語られることが多い。本書の立場は後者で、イギリスと他のヨーロッパ諸国や民族とのせめぎ合いや、当時の王朝の様子から語られることが多い。

この本の独特な点は、日本語の古文にも精通した筆者が、適宜日本語の例も用いて英語に起こった現象を述べているところである。日本の古文について知っていると、こんなにも英語史を豊かに語ることができるのかと驚かされる。

終章の、筆者の理想とする英語教育・日本語教育の記述には、実は英語史の内容とはまったく関係ない話も多い。また、内容としても好みの分かれるところであろう。
しかし、全体としては、イギリスおよびヨーロッパの歴史と英語というものがいかに関係しあってきたかについてよくわかる、優れた本である。

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# 『「英文法」を疑う』
2009/09/23 11:55
「英文法」を疑う 松井力也 講談社現代新書 1999年



著者は、本書が出た時点では、現役の英語教師である(現在は不明)。
著者は、英語と日本語はまったく異なった言語であるゆえに、そもそもその発想法には天と地ほどの差があるという視点に立つ。そこから、著者なりの英語理解法が説明されていく。英語と日本語の違いは、その使い手の思想や文化を色濃く反映したものであるとする立場からの記述は、言語と思考がどこまで密接に関わっていて、どこからは独立したものであるのかを考えるための良い材料になろう。

個人的には、前置詞の説明が秀逸であったと思う。例えば、なぜ
 We will soon make a brief stop at Nagoya.
とatを用いるのか。
それから、
 The sun rises in the east.
とinが使われるのはなぜか。
この答えは、本書の説明で明確になる。

発売したのが前で、絶版になっている可能性が高いので、中古や図書館を検討してみてください。

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