2025/01/22 14:07
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2009/09/28 17:32
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マネー・ボール マイケル・ルイス(中山宥 訳) ランダムハウス講談社文庫 2006年 大リーグのチーム、オークランド・アスレティックスは、非常に資金力に乏しい球団でありながら、常勝チームとしての地位を確立している(近年は低迷)。その秘密とは、何であろうか?それは、野球を統計的に分析し、費用対効果比を上げようとしてきたことによる。 では、実際どのようにしているのか。また、そのような方法を巡って、フロント・選手・監督・コーチのそれぞれの間には、どんな軋轢があるのか。様々なエピソードによって、チームの現実が浮き彫りにされていく。 衝撃的な本である。 安い買い物をし、高い効果を得るには、まず、選手の実力を正確に測る必要がある。それには、野球における数値のどこを評価すればよいのか。その分析が、この本の大きな幹である。本書で展開される理論は、多くの場所で大反響を得た。同時に、拒否反応も受けている。 しかし、野球理論だけでも十分驚きに値するのに、それだけで終わらないのが、この本の魅力である。 本書の根幹にあるテーマには、「経験者と未経験者」「内部と外部」の対立がある。 これこそが本書を単なる野球本の地位に留まらせず、ビジネス書とまでも言わせている理由であろう。 実は、アスレティックスの経営側は、野球未経験者で構成されている。それゆえに、時に選手や監督の中からは、フロントの方針に対して「野球をやったことがないくせに」という不満が噴出する。しかし、現実には、野球経験者だからこそ陥ってしまう落とし穴があるのも事実である。伝統的には意味があるとされている作戦や選手の評価法が、理論的には無意味だと判明してしまうことがある。その時、経験者達は、何を感じ、どう考えるのか。本書では、このような葛藤が克明に描かれている。 このような対立は、「内部と外部」という言葉に言い換えることもできよう。内部のものにとっては、譲れないもの、大切なもの、当たり前のことが、外部にとっては奇異なものに見えることが、多々ある。例えば、政治家と一般市民、公務員と民間、学校と塾など。いずれの例も、前者を内部の者とすると、その常識が外部に当たる後者にとっては信じられないことがあることを示す。 つまり、『マネー・ボール』に描かれていることは、結局のところ、現実の社会の状況を野球界という一側面によって切り取ってみた断片であるとも言える。その辺りが、本書をしてビジネス書とせんとする一角が存在する理由であろう。 本書の理論について簡単に触れてみたい場合は、マネー・ボール理論とはを訪れてみると良い。理論の大枠が、日本の野球とも絡めて詳しく解説されている。 また、本書の理論を解説した上で、やや批判的な検討も試みている記事としては、『マネー・ボール』を検証するがある。 |
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